メモ。

あんなこともあったなって思うためのメモ。

バフ

自分にお金をかけることが自信につながるって話、確かにそうかもって思って、たくさんお金をかけてみた。

美容室にはなるべく通うし、カラーもちゃんと美容室でして、めんどくさいしお金もかかるけどロングヘアにパーマをかけて、いいヘアバターつかって、洗い流さないトリートメントを買って、エッセンシャルからボタニカルのシャンプーに変えてみた。

そうなるとムダ毛なんかもちゃんと脱毛したほうがいいのかな、とか、ダイエットにもジムに通うのがいいのかな、とか思い始めて、だけど今私はまだカミソリで除毛して、野菜を多めに食べるだけの食生活をしてる。

なにもしなかったころには、何もしないから恋人もできない、何もスキルがないから正社員になれない、と思っていたけど、何かをし始めたら、こんなにいろんなことをしても何者にもなれず、かといってネイルやエステ、脱毛サロンにお金をかけない私より努力している人たちがいるのだから仕方ない、と思い始めた。

でも世の中には私よりお金をかけなくても幸せに生きている人はいるし、いいひとに巡り会える人もいる。きっとその人たちにはそれとは違う魅力や武器があり、自分に合った生活をして一人前の暮らしをしてるんだと思う。

でもここでこんなことを言ってる私も、社会の中ではいちおう、いつも笑顔で悪口も弱音も吐かず生きていたりするのだ。自慢もしない、政治や宗教の話もしない。会社が潰れかけの父親がいて、ニートの兄がいて、頑張り屋の母親がいる。そういう話もしたりはしない。

人の話をよく聞き、ニーズに合わせて話を盛り上げる普通の人。堅苦しくいうとそんな感じで、緩くいうと盛り上げ役、踏み台。誰かの悩みは解決する、相談を受けて仲人をかって出た友人も結婚した。

でもそうやって、いい人だとか、社会にとって真っ当な人でいるためのスキル、もちろん自分のためでもあるけれど、年相応のおしゃれをする力を自分に付加して行くたび、付加価値を自分の価値と思いこみ、勘違いして知らないうちに、それより頑張ってなさそうな人を妬むようになっていく気もする。

どうして自分はダメなんだと考えるのは、誰かにと自分を比べて、あの人より頑張ってるのにどうして?と思ってるのかもしれない。それをいくら隠しても表に出ているのかも?だからダメなのかも。

いくら装備を強化しても、バフをかけても、私のレベルは上がらない。私のレベルはどうしたらあがるのだろう。

筋肉をつけても、肌を綺麗にしても、高い化粧品を使っても、それは私の中身に作用しなかった。

博識なひとになりたくて、かっこいい人の真似をして本を読んだけど、そこから得られるものも何もなかった。すごく有名な作家の作品を何冊も読んだ。躍起になってるうちに、かっこいいかなんてわからなくなった。結局、合間になんとなく手に取ったないたあかおにが一番泣けた。

推理小説も、一緒に推理しながら読んだ。犯人は途中でわかった。爽快感を得ることはできなかった。なぞなぞを解いていたほうが手軽で楽しかった。

そんな私でもだれか、だれか一人くらい好きでいてくれるのかもと思って、合コンや街コンも参加した。接客業のスキルが裏目に出て、友人たちの結婚をやっぱりサポートするだけだった。

私の何がダメなのだろう。

そう考えると、山ほどダメなところは出てくるのだ。だけど、幸せに生きてる人はそういう部分が全くないのか?といえばそんなことはないとも思う。

世の中は素材があって、それを活かすためのスキルが必要で、どちらが優れていてもどちらかがダメならダメなのだ。でも、私のいいところ、わるいところ、どこがそうなんだろう。

長所は短所の裏返しだそうだ。わかる。物は言いようだよね。

たくさんであってダメなら、それは私のニーズがないだけの話。たくさん努力してダメなら、からぶっているだけの話。でも努力はやめられないし、外に出るときはお化粧もしたい。本当はすっぴんで髪ボサボサで、顔なんか洗ってなくても好きでいてくれるひとに好きでいて欲しいし、私も相手のことをそうやって愛してあげたい。とはいえ、私にその器がないのもそうなのだと思う。

初対面で合わないと思った人間と付き合ってて、よかったと思うことがない。最後は私が耐えきれなくなって、もう悪者でいいから縁を切りたい!と嘆きながら縁を切る。ついでに相手との共通の知人との縁も切れる。わるいことは何もしてないと思う。でも相手の言い分があるのもわかる。追いかける価値のない人間である自分のことを知ってしまうこともある。

よくひとに頼られて生きてきたほうだと思うけど、頼られるたびに、挟まれるたびに、どっちの言い分もわかってしまって八方美人と言われて土下座させられたりもした。痴話喧嘩に巻き込まれて男からも女からもビンタされた。これだけ聞いて、こいつに多分わるいところがあるんだろうな、と思う人が大半だと思うけど、彼氏が他の女と複数人でカラオケに行ったのを止めなかったという理由だったし、止めてくれたら行かなかった、一発殴らせろと殴られた。

あのときはまだ学生だったし、同じゼミのグループの友人でもあったので、他の人への迷惑も考えて殴られたけれど、卒業してから全部私がわるいように改編されて、就活中で気を遣って巻き込まなかった友人にも縁を切られた。

そんなときに、巻き込まないであげたのに、と思うこともきっと、こんなにおしゃれしてるのに誰も見向きもしてくれない、という責任転嫁に繋がる気がして、努力なんて全部独りよがりで、それに気づけてよかったねと言われても気づきたくなかったなという気持ちで、揉め事に巻き込まないことも、おしゃれも、全部独りよがりで、結婚したいことも親に孫の顔見せなきゃいけないことも全部私の独りよがりで、あー。

生きるのは大変だ。見えないものに不安を抱き続けて、最悪な時でももっと最悪を予想して、私はいつまで生きていくのだろう。